驚くべき新税制への要望事項!!
2007年9月28日

非営利法人総合研究所(NPO総研)
主席研究員 福島 達也

 

先日、公益法人制度改革に係る税制上の措置として、平成20 年度税制改正(租税特別措置)の要望事項が内閣官房行政改革推進本部事務局から提出された。

これは、寄附文化の醸成と民による公益の増進を図る目的で、平成20 年12 月1日施行の新公益法人制度から適用される、新しい公益法人の税制を占う、重要なファクターになるであろう。

ただ、新しい公益法人の税制については、今までどおりの主張という感じだが、一般社団・財団法人の税制については、現行の公益法人同様の原則非課税(収益事業のみ課税)を要望しており、これでは何のための改革なのかまったくわからなくなるので、いくらなんでも無理であろうと思われる。

新公益法人税制で特に注目されるのは、税制上の収益事業であっても公益目的ならば非課税にすべきという部分だ。ただし、政府の厳しい台所事情を考えると、なかなか実現は難しいであろう。
また、寄附金の優遇税制については、これがなくては何も変わらないという批判も予想されるため、ほぼ間違いなく要望は通ると思われる。
軽減税率の適用については、五分五分の可能性という感じだろうか。


以下に、法人税、所得税、相続税、登録免許税、消費税、印紙税、その他についての、公益社団・財団法人(以下「新公益法人」)に関する税制要望を記載する。

(1)法人税
@現行公益法人に適用されている収益事業課税の取扱い(収益事業から生じた所得以外の所得及び清算所得について非課税)を新公益法人に適用すること。
A公益法人認定法上の公益目的事業については、収益事業に該当する場合であっても非課税とすること。
B公益法人認定法上の収益事業等から生じた所得のうち課税対象となるものに関しては、同法上の公益目的事業財産となる額について非課税とすること。
C軽減税率(22%)を適用すること。
D新公益法人に対する法人の寄附金について、現行の特定公益増進法人に対する寄附金と同じ課税上の扱いとすること。
E合併について税制上所要の措置を講ずること。

(2)所得税
@新公益法人に対する個人の寄附金について、現行の特定公益増進法人に対する寄附金と同じ課税上の扱いとすること。
A現行公益法人に適用されている受取利子等の非課税措置を新公益法人に適用すること。
B新公益法人に対する個人の現物による寄附について、現行公益法人に適用されている租税特別措置法40条の措置に関し、所要の見直しを行うとともに、国税庁長官の承認が取り消された場合の課税について所要の措置を講ずること。

(3)相続税
現行公益法人に適用されている租税特別措置法70条の措置を新公益法人に適用すること。

(4)登録免許税
登録免許税法別表第一において、現行公益法人の各種登記が課税対象とされていない取扱いを新公益法人に適用すること。

(5)消費税
消費税法別表第一において、現行公益法人による法令に基づく事務に係る役務の提供についての非課税措置を新公益法人に適用すること。

(6)印紙税
現行公益法人が作成する定款、受取書について課税対象とされていない取扱いを新公益法人に適用すること。


公益性の有無に関係なく設立できる一般社団・財団法人に関しては、以下のような税制要望であるが、やはり先述のとおり、現行公益法人と同じ原則非課税(収益事業のみ課税)というのは、設立に何の許認可もいらないことを考えると、やはり実現は難しいであろう。

(1)法人税
@現行公益法人に適用されている収益事業課税の取扱い(収益事業から生じた所得以外の所得及び清算所得について非課税)を一般法人に適用すること。
A合併について税制上所要の措置を講ずること。

(2)所得税
@現行公益法人に適用されている受取利子等の非課税措置を、一般法人に移行した法人における公益目的支出計画の実施事業資産に係る受取利子等に適用すること。
A現行公益法人に適用されている租税特別措置法40条の措置を一般法人に移行した場合でも継続する(一般法人への移行をもって国税庁長官の承認を取り消さない。)とともに、国税庁長官の承認が取り消された場合の課税について所要の措置を講ずること。

(3)相続税
現行公益法人に適用されている租税特別措置法70条の措置を一般法人の公益目的支出計画に係る財産について適用すること。

(4)登録免許税
登録免許税法別表第一において、現行公益法人の各種登記が課税対象とされていない取扱いを一般法人に適用すること。

(5)消費税
消費税法別表第一において、現行公益法人による法令に基づく事務に係る役務の提供についての非課税措置を一般法人に適用すること。

(6)印紙税
現行公益法人が作成する定款、受取書について印紙税法別表第一における非課税物件とされている取扱いを一般法人に適用すること。



また、移行についての非課税措置としては、次の3点が要望事項だ。
(1)現行公益法人が移行の認定又は認可を受けるまでの間は、現行の公益法人税制を適用すること。
(2)現行公益法人が特例民法法人又は新公益法人若しくは一般法人に移行する際、課税が生じないようにすること。
(3)特例民法法人の合併について税制上所要の措置を講ずること。



なお、これらがすべて実現すると、減税見込額は年間260億円に及ぶことになる。どれだけ実現するのか楽しみな反面、世論を考えると、かなり難しい内容となっているのも事実だ。

非営利法人総合研究所

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